ビジョン奈良 奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム
 

第3回複合領域分科会の概要報告

奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム「第3回複合領域分科会」(2011年9月17日)の概要

(文責)座長:村田 武一郎


今回は、これまでの分科会、県民各位からの政策提案等により得られた情報をもとに作成した「複合領域に関する政策提案(案)」を紹介し、議論を行った。

1.複合領域に関する政策提案(案)
方針-1.域内消費拡大のための総合的対策を実行する

施策の目標を「複合領域にわたる課題に対応し、総合的振興を図る」とし、下記の4つの方針と13項目についての提案(案)を紹介した。

1.域内生産・消費拡大対策の総合的実施

2.集落・まち単位での6次産業の開発・振興

3.名産品の開発

方針-2.安全な都市・地域をつくる

1.最悪を想定した広範な防災計画の検証・改訂

2.住民参加の地域防災計画づくりとコミュニティ機能の育成・強化

方針-3.自律環境都市・地域をつくる

1.低炭素・循環型社会のショーケースとしての奈良県づくり

2.エネルギーの地産地消に向けた県民発電所の開発・設置

3.低炭素・循環型社会づくりに向けた異分野のNPO等の「民・民共働」の促進

4.農林畜産業・市民連携による地域循環システムの構築

方針-4.奈良の資源を評価・再編集し発展可能性を高める

1.領域を超えて結びつきを深める拠点を創る

2.歴史文化資源の幅広い活用

3.歴史的文化財の商業コンテンツとしての有効利用

4.ふるさとの掘り起し・人と人との交流の拡大・活力の醸成

2.総合討論

上記に関連し、1)非常時を見据えたコミュニティ機能の再構築と強化、2)ヘリコプターの配置拡大と多用途活用、3)道路建設の考え方の修正と幹線道路の整備促進、4)産業発展(特に沿道立地型産業)を助長・促進する道路計画などの必要性について、活発な意見交換が行われた。


※総合討論の内容を勘案し、必要な修正を行い、第4回総合フォーラム(10月1日)で、政策提案(案)を発表することとなった。


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次回予告

第4回総合フォーラムを下記のとおり開催いたします。ぜひ、ご参加ください。
日時:10月1日(土) 12:45開場?17:15
会場:奈良県立大学3号館2階ホール

内容:奈良の将来ビジョン(第2次)の提案/総合討論?参画と「共働」により奈良の将来を築こう

 

第3回複合領域分科会案内

2011年9月17日(土)14:00-16:30
奈良県立大学3号館2階ホール

14:00-14:05 開会あいさつ・趣旨説明
14:05-15:00 複合領域における政策提案(概案)
         座長:村田武一郎(奈良県立大学教授) 
            野口隆(奈良産業大学教授)
15:20-16:30 総合討論(会場を交えた意見交換)

◇参加費:資料代700円
◇ぜひ、ご参加いただきたく、E-mail:vision@nit-ass.jpへ、
1.氏名、2.所属、3.連絡E-Mailアドレスをお知らせください。


 

第2回複合領域分科会の概要報告

奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム「第2回複合領域分科会」(2011年8月27日)の概要
(文責)座長:村田 武一郎
1.はじめに
各地域においては、個別的な分野だけでは、解決できない課題が多くなっている。防災・環境・エネルギーも、そうした重要課題である。

2.複合領域の現状と課題
2-1.これからの安全都市・環境共生都市づくり
村田 武一郎(奈良県立大学教授)
(1)阪神・淡路大震災からの教訓を踏まえた安全都市づくりの課題
ヒューマンレベルでは、耐震(免震)・耐火設計、地盤強度の強い場所の選定や軟弱地盤の改良、ライフライン引込みにあたっての境界上での強度・ゆとりの確保が、コミュニティレベルでは、オープンスペースの確保(公園、街路・街路樹、小河川など)、耐震(免震)・耐火構造の中層建築物の配置、当面の自活を可能とする1/3自立型エネルギー等システム、コミュニティ活動の育成が必要である。都市レベルでは、土地利用の再編、鉄道・道路の強度向上、拠点施設の信頼性確保、電気・ガス等ライフラインの階層別必要強度の確保と緊急時対策の充実、最悪シナリオと対応策の整備、防災・安全に関する教育・学習の徹底が必要となる。都市圏レベルでは、多核ネットワーク型・ラダー構造型の都市圏構造への発展、局所的集中箇所を回避する新たな鉄道・道路の整備が望まれる。
(2)自律環境都市づくり
都市は、利便性や経済的な豊かさのみを優先しすぎたために失ってしまった様々な要素、即ち、自然・生物との共生関係、伝統的な生活様式や文化、地域の個性や地域特有のアメニティなどを見つめ直し、市民自身が新たな生活スタイルを創り出すことを含め、人々の生活の舞台としての豊かな都市環境を創造していく必要がある。
同時に、資源の有効活用・再活用および循環のための仕組みを早急に構築し、化石エネルギーをはじめとする外部からのインプット、大気環境・水環境への排出物や固形廃棄物などのアウトプットを極限まで減少させ、生物・生態系環境、地球環境に優しい都市を実現する必要がある。

2-2.温暖化の抑制と県民・農林業の連携
大塚 徹(一般社団法人地域づくり支援機構理事・事務局長)
地球の平均気温は過去100年間で約1℃上昇している。これは産業革命以降に人類が排出した二酸化炭素を主とする温室効果ガスの増加が原因である。我が国も「京都議定書」(1997年)に従い、温室効果ガスの削減に努力してきたが、成果はほとんど挙げられていない。奈良県においても同様で、県および奈良県地球温暖化防止活動推進センターが中心になって温暖化防止に努めているが、無関心層へのアプローチに苦戦している。原発事故を契機にようやく省エネ・節電の機運が高まった程度である。
本フォーラムにおいては、地域づくりが目的であっても、結果的に温暖化防止につながるような提案が数多くなされている。温暖化防止活動(省エネ、新エネ開発、森林整備)の裾野を広げていくためには、環境問題に取り組むNPO等と、地域づくりを進める団体等の、異分野のNPO同士が“民?民共働”することが有効である。

2-3.住民参加の地域エネルギー政策
永冨 聡(浦和大学講師)
2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故の発生により、これまでの電力供給政策の継続が困難になるなか、小規模分散かつ住民参加が可能な再生可能エネルギーに期待が集まっている。奈良は、バイオマス燃料が獲得しやすく、また、耕作放棄地面積が広いことなどから、再生可能エネルギー発電設備の設置用地を確保しやすい地域と考えられる。こうしたなか、北海道グリーンファンドやおひさまファンドなど、住民からの出資を募り、再生可能エネルギー発電設備の導入を進める「市民共同発電所」が全国的に広がりつつあり、奈良でもこうしたスキームをとり入れていくことが有効と考えられる。また、住民がまとまって自ら再生可能エネルギー発電設備を所有し、造り出した電力を自らの住まう地域で使う“エネルギーの地産地消”に向けて、地域での電力需給の調整・制御を行う社会実験、再生可能エネルギー拡大の制度的障壁の解消、再生可能エネルギー拡大に協力的な民間企業の活用などにも積極的に取り組んでいくことが望まれる。

3.総合討論
下記のような議論・提案があった。
<防災>
奈良県は、過去に震度6以上の地震に見舞われていないが、阪神・淡路大震災、東日本大震災からわかる最悪シナリオを想定し、防災計画の検証・改訂を行う必要がある。また、東南海地震、上町断層帯地震などにより被災する近隣府県の復旧・復興支援を含めた防災計画とすることが望まれる。さらに、県レベルの防災計画と市町村レベルの防災計画を連動させることはもとより、災害時の情報の集約・管理・発信、ヘリコプターの活用などについて、県が中核の役割を果たすことが必要である。なお、災害時における現場への権限委譲についても、十分に検討されることが望ましい。
災害時の避難について高齢者が不安を感じていることが報告されており、住民自身が最悪のケースにどのように対処するのかの意識をもつためにも、住民による地域防災計画の検証、住民参加の地域防災計画づくりが必要である。一方、コミュニティにおける日常的なつきあいが減災に結びつくことから、コミュニティ機能の育成・強化が重要である。
<環境・エネルギー>
シャープ天理研究所、大和ハウス総合技術研究所(平城山)などでは、スマートグリッドの研究を進めており、奈良県が産学官の連携による自然エネルギー利用実証研究拠点になることが望まれる。
奈良県の強みである森林資源、遊休農地などを活かし、自然エネルギー活用を進めるために、「奈良県地域エネルギー開発基金」を設置し、県民の資金参加と思いの具体化に資することが望まれる。

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次回予告
第3回複合領域分科会を下記のとおり開催いたします。ぜひ、ご参加ください。
日時:9月17日(土)14:00?17:30
会場:奈良県立大学3号館2階ホール
内容:複合領域における政策提案(案)<詳細は案内チラシでご確認ください>
 

第2回複合領域分科会開催の件

第2回複合領域分科会を以下の通り開催致します。
 日時:8月27日(土)14:00-17:30
 内容:防災・環境・エネルギーの現状と課題(添付ファイルをご覧ください)。
 場所:奈良県立大学3号館2階ホール

 
第2回複合領域分科会案内チラシ(PDF)
 

第1回複合領域分科会の概要報告

奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム「第1回複合領域分科会」(2011年7月23日)の概要
(文責)座長:村田 武一郎

1.はじめに
今年度、国土交通省が「官民連携主体による地域づくり推進事業」を創設した。その趣旨に、「地域の活性化に関する従来型の行政支援策が抱える官の縦割り・横割りの制約や、民の政策決定過程への関与の弱さを克服し、地域の官と民がそれぞれの異なる役割を補完し、互いに連携して地域固有の資源を活かしつつ、自発的に地域の活性化を進めることが必要」という文言が出ている。本来、地域は、総合的な存在であるが、これを分野別に分断統治し、地域づくり活動を阻害してきたことに、国がようやく気づいたと言える。各地域においては、個別的な分野だけでは、解決できない課題が多くなっており、この分科会では、特定分野を超えた、複合領域に関わる議論を進めたい。


2.複合領域の現状と課題

2-1.産業振興(農商工連携)
徳田裕平(財.大阪市都市型産業振興センター経済調査室長)
奈良県の産業構造・消費構造・人口構造等を踏まえて、域内消費の拡大の必要性について提案があった。即ち、奈良県の消費流出が問題であり、奈良県人の域内消費拡大のために、生活の楽しみの創造、地域メディアの活用、モビリティ機能の向上を図るべきこと、また、域外からの消費を呼び込むために、観光ルート・拠点で高齢者が安心して楽しめる工夫、奈良ファン10倍戦略、中部圏との連携戦略を進めるべきことが示された。一方、モビリティ産業の拡充、大学の活用(産学連携、ベンチャー、学生への産業教育など)をはじめとする受け皿側の質的向上の必要性も示された。

2-2.領域を超えて考えよう
神剛司((株)乃村工藝社チーフプランナー)
教育・福祉・産業・雇用・観光といった複合領域に係る「なら幸せ村?地域資源を再編集、回想法を導入し、文化力で地域を活性化する複合施設」が提案された。博物館を核とし、そこに集約された先人の知恵・技・生き様等の文化を次世代に継承することと同時に、それを活用して高齢者の脳を活性化させ、気持ち(心)を元気にさせること、また、地域の資源(田園空間、病院、介護施設、学校、保育所等)を再編集し関連づけ、地域における人と人とのつながりを回復し、社会的に新たな価値を創り出し、地域の活力を高めていく仕組みが示された。なお、この提案は、単に施設間の連携を言うものではなく、地域に必要な機能の連携という側面を持つことに留意する必要がある。

2-3.農林業×観光×交流
野口隆(奈良産業大学教授)
農家レストラン「清澄の里 粟」、和歌山県田辺市上秋津地区の事例から、「農林業×観光×交流」といった複合的な対応の重要性が示された。2000年に開業した「粟」は、田園空間に立地し、自ら伝統野菜を栽培するのみならず、近隣農家の栽培品の提供を受け、それらを使った料理を提供している。また、「清澄の里」地区を売り出す商社の役割も果たしており、地域6次産業の優れた事例である。田辺市上秋津地区では、農家の高齢化、新住民の増加を背景に、地域住民の資本参加を得て、コミュニティビジネスを行っている。農産物直売所「きてら」(売上高約1億円)、俺ん家ジュース倶楽部(70種の多品種みかんの詰合せ、約7,000箱を販売)、秋津野ガルテン(廃校になった小学校と土地を地元の共有財産を管理する愛郷会が1億円で買取り、農家レストラン・宿泊所・農業体験学習施設として運営、売上高2億円、交流人口12万人)があり、住民参加による地域6次産業の発展形と言える。


3.総合討論
奈良の将来ビジョン(第1次提案)に示した複合領域関連項目、寄せられた政策提案の紹介の後、活発な意見交換が行われた。以下に、いくつかを紹介する。
域内消費を拡大する方策については、自転車利用を容易にする自転車道ネットワークと交流拠点づくりが有効な方策のひとつであることが確認された。
地域6次産業化にあたって、耕作放棄田、空家などの所有者の理解が得られない実態をどのように改善するのかについては、明日香村における事例、奈良市都祁地区における事例が紹介され、「交流が楽しみ・励みになる」成功事例を示しつつ、耕作放棄田や空家が重要な地域資産であることへの理解を得るステップが重要であることが確認された。
今はバラバラになっている「生きていく(生活していく)」ための情報を一括して提供する仕組みや各種「居場所」の提供が必要であることが確認された。

第1回複合領域分科会

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次回予告
第2回複合領域分科会を下記のとおり開催いたします。ぜひ、ご参加ください。
日時:8月27日(土)14:00-17:30
会場:奈良県立大学3号館2階ホール
内容:防災・環境・エネルギーの現状と課題(詳細は案内チラシでご確認ください)

第2回複合領域分科会案内チラシ(PDF)


 

第1回複合領域分科会のご案内

◇日時:2011年7月23日(土)14:00-17:30
◇場所:奈良県立大学3号館2階ホール
14:00-14:05 開会あいさつ・趣旨説明
14:05-15:35 複合領域の現状と課題

座長:村田武一郎(奈良県立大学教授)
         野口隆(奈良産業大学教授)
産業振興(農商工連携)
  徳田裕平(財.大阪市都市型産業振興センター経済調査室長)
福祉×地域づくり&教育×地域づくり
 神剛司(地域づくり支援機構地域プランナー・コーディネータ)
農林業×観光×交流
 野口隆(奈良産業大学教授)

15:50-16:00 寄せられた政策提案の紹介
16:00-17:20 総合討論(会場を交えた意見交換)

◇参加費:資料代700円
ぜひ、ご参加いただきたく、E-mail:vision@nit-ass.jpへ、
1.氏名、2.所属、3.連絡E-Mailアドレスをお知らせください。
 

複合領域分科会

課題となっておりました、複合領域につきまして、第2期で分科会を設置し議論してまいります。
農林業と食料、医療・福祉、教育の3つの分科会の議論を受け、以下のキーワード等について検討していきます。

農林業と地域づくり・観光交流/食育/教育と地域づくり/福祉と地域づくり
地域6次産業/循環型社会/環境価値/県土構造


座長:村田武一郎(奈良県立大学教授)
野口隆(奈良産業大学教授)