ビジョン奈良 奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム
 

観光・交流分科会概略まとめ

◇10月16日の第3回観光・交流分科会において、観光・交流政策の概略まとめを提出しました。第1回(7月17日)、2回(8月28日)の分科会での議論ならびに会員から寄せられた政策提案を基に編集したものです。第1次素案であるということもありそれぞれの意見、提案をほぼそのまま引用しました。

◇編集にあたっては、地域づくり分科会の成果をうけつぎ、奈良県の将来発展方向を「人々の能力と資源を活かした自律発展を成し遂げ、国内・世界各地域のモデルとなる奈良県」とし、奈良県の将来に向けての施策の目標(地域分科会の8目標に、本分科会として1目標追加し9目標)を設定しました。そのうえで、各政策提案を目標の具体化という観点から以下の通り分類・整理しました。

目標=分野別の提案(PDF)

目標1.人材の創出

4-17 こどもたちによる「お迎え」マップの作成
4-19 奈良パスポートの発行による奈良を挙げての歓迎体制づくり

目標2.NPO、ボランティア、地域団体の発展

4- 1 観光交流支援機構-外国人旅行客(インバウンド)の来奈良の促進と交流
4-16 京都を超える 奈良の魅力の「情報発信の力」をつける
6- 1 奈良の産業の活性化に向けて-ハートフル奈良観光都市宣言

目標3.広域生活圏づくり

4-10 「ならまちロード」の設定と奈良市街のエリア分割
4-13 歴史のつながりを感じる観光
4-14 宇陀の高原地帯を歴史・文化・アウトドアの聖地化-連携した総合力がある観光リゾ―トとする
4-18 視覚障害者のための観光ナビゲート用システムの導入
4-23 屋根付き、簡易トイレ付きの団体用休憩所(おべんと広場)の設置

目標4.高次人材の創出

4-6 本格的・特異な「国際観光学部・学科」の新設

目標5.交流の促進

4- 3 宿泊観光の振興策-観る観光から交流する観光へ
4-20 人を中心とした観光交流への再構築

目標6.観光の産業としての振興

4- 4 奈良の観光交流の質の向上を目指す観光交流評価情報提供システムの構築
4- 8 奈良を売り込むため-京阪神や首都圏や九州などへの奈良の有力店の出店促進
4-11 神社仏閣の6時開門
4-12 ナイトマーケット「平城夜市」の通年開催
4-15 地域観光資源の掘り起こしと新たな切り口の検証
4-24 現県庁の場所を新しい観光産業集積地とし、世界的な高級ホテルを誘致する

目標7.循環型社会:自然との共生


目標8.行政の能力発揮

6-2 奈良K3(ケイキューブ)-環境・観光・県庁のKが「×(かける)」に作用する奈良県づくり

目標9.文化の創造

4- 2 「芸術と歴史の都 奈良」の出版
4- 5 日本人の心の故郷:奈良へ
4- 7 新旧住民が協働 -地域の魅力をアピールする映画づくり
4- 9 南都八大寺セミナーの常時開催
4-21 日本の(日本人の)故郷:奈良づくり

◇今後、さらに皆さまからご意見をいただき、ほかの分科会のまとめとも調整しながら、11月20日の総合フォーラムに向けてブラッシュアップしていきます。なお、誰がどのように具体策を実行していくかについては、今後の課題です。

◇ご覧のうえ、10月末日までに、vision@nit-ass.jp へご意見をいただければ幸いです。
 

奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム「観光・交流分科会」概略まとめ

第1次素案


◇10月16日の第3回観光・交流分科会において、観光・交流政策の概略まとめを提出します。第1・2回分科会での議論ならびに寄せられた政策提案を基に編集したものです。第1次素案であるということもありそれぞれの意見、提案をほぼそのまま引用しています。

◇編集にあたっては、地域づくり分科会の成果をうけつぎ、奈良県の将来発展方向を「人々の能力と資源を活かした自律発展を成し遂げ、国内・世界各地域のモデルとなる奈良県」とし、奈良県の将来に向けての施策の目標(地域分科会の8目標に、本分科会として1目標追加し9目標)を設定しました。そのうえで、各政策提案を目標の具体化という観点から分類・整理し、施策を位置づけました。

◇今後、さらに皆さまからご意見をいただき、ほかの分科会のまとめとも調整しながら、11月20日の総合フォーラムに向けてブラッシュアップしていきます。なお、誰がどのように具体策を実行していくかについては、今後の課題です。

◇ご覧のうえ、10月末日までに、vision@nit-ass.jp へご意見をいただければ幸いです。



1.奈良の観光・交流の現状・問題点

(1) 総論

1 奈良は観光先進県ではない                 野口隆(奈良産業大学教授)              
約20年前のシルクロード博覧会開催年に4,100万に達した奈良の観光入込客数は、2008年には3,579万人にまで減少し、修学旅行生も減少を続けています。宿泊施設数は全国45位、客室数は全国最下位の状況です。日本に来た外国人観光客の6.5%が奈良県を訪れていますが、奈良県に泊まる外国人数は全国36位です。外国人訪問率が高いと感じるかもしれませんが、奈良県は、関西国際空港と成田空港を結ぶ観光ルートに含まれ、他府県に比べて有利な位置にありながら、この数値でしかないと考えてみることも必要です。

2 観光立ち遅れの原因は何か
観光立ち遅れの原因としては、この20-30年の間で、団体旅行から個人旅行、見る旅行から体験・交流する旅行へと観光の形態が変化してきましたが、その変化に、観光産業の対応が追いついていない点を挙げることができます。例えば、団体向けで広い客室の宿泊施設が多い、奈良県内で周遊する際、観光バスやマイカー以外では困難であることなどです。そして、問題なのは、もてなしの心の欠落、食べるもの・土産物の少なさです。その結果、奈良に来ていただいても、落としてもらえるお金が少ないということがあると思います。

3 奈良観光実態調査
奈良のむらづくり協議会が2007年から、県内各地で、観光客にインタビュー形式のアンケートを行っています。宿泊施設、土産物店や食事処などの「もてなし」に関して得られた結果を活かし、天川村や十津川村のように、満足して帰られる観光交流地に改善していく必要があります。青森県では、こうしたお客様の声を取り入れ、観光業者が自らの行いを改善し、改善結果を観光客に返していくという取り組みを行っており、観光客数の増加も報告されております。

4 奈良の新しいイメージづくりを      林信夫(平城遷都1300年記念事業協会プロデューサー)
平城遷都1300年祭は、平城京跡会場を中心に、当初想定の倍くらいの人たちがお越しになっています。特に、関西圏よりも首都圏の方々の反応が良く、ありがたく思っております。最初は、せんとくんへのバッシングがすごかったのですが、この情報社会の中では、マイナス情報がプラスに作用することがあり得るなと思っています。
平城遷都1300年祭は、以前のシルクロード博覧会のように奈良市内だけが潤うのではなく、全県下が潤うようにしなければなりません。中南和地域が重要なのですが、その中南和地域は、持続発展できる可能性をもつた取り組みを見せています。そこで、この機会に、個別地区の発展はもちろんのことですが、全体的に相乗効果を醸し出しながら、奈良の新しいイメージをつくっていくことが重要であると思っております。

5 観光に対する住民の理解が必要                 麻生憲一(奈良県立大学教授)
住民が自分たちの町をどのように考えているのか、納税者と言われる大半の人たちが、地域づくりや観光まちづくりの必要性を理解できていないと思います。
その中で、観光立国だ、観光立県だと言っても、その思惑が全く伝わっていません。それでも、国は今、観光立国推進基本法という法律の第5条で、住民の役割を強く打ちだしています。

6 過疎化と観光振興策
奈良県内の約70%の地域で、高齢化と同時に過疎化が進んでいます。観光を考えた時、奈良は世界遺産を抱えるような地域と林業を中心にするような地域で、観光に必要とされていることへの理解ができているのかが問題となっています。例えば、十津川村は、世界遺産という観光資源を活かした取り組みをしようとしていますが、十津川村だけにとどまらず、南北を結ぶ工房街道のように、ルートをつくることが重要であると思います。

7 地域にとって何のための「観光・交流」か?               北尾 篤(吉野町長)
吉野町は観光の町といわれながらも観光にはほとんどお金をかけておらず、対する行政もほとんど観光の指導をしていないという状況です。
 観光は何のためにするのでしょうか。行政をしておりますと地域住民の幸せをいかにつくっていくかということが目的にあります、そのことに観光や交流がどのように役に立つのでしょうか。行政という立場にいるとついそのような観点から考えてしまいます。観光客を増加させること、経済効果、観光に求める効果、本当に観光客に来てもらう必要があるのか等、色々なことを考える中で観光・交流に何を求めたら良いのでしょうか。これは、それぞれの立場によって異なっていると思います。

8 訪問者にとって
そしてお客様や訪問される方にも「何を求めるか」ということや、「何を提供できるか」ということをしっかり認識しなければいけないと思いました。

9「おもてなし」に関して 
 奈良県も全体ではそれ程良いとは言われていないと思いますが、吉野町は「おもてなし」が特に悪いと言われています。吉野山はサクラが基本的に年に3週間程咲きますので、とにかくこの間に1年分儲けようとか、リピーターになってもらえなくても構わないというような感覚がどうしてもあるように見受けられます。


(2) 各論

1 今年の奈良観光                 中野聖子(ホテルサンルート奈良専務取締役)
奈良市内の観光事業従事者にとって、今年は本当に感謝の年となっています。ここまでの盛り上がりと集客は予想外の嬉しい展開でした。奈良は、閑散期と繁忙期の振れ幅が大きく、私どもは、年間4ヶ月の繁忙期でその他の月の穴埋めをできるかどうかと思い悩んできたのが通常の状態ですが、今年に関しては、3月以降ずっと安定した高稼働を保たせてもらっています。
これも、これまでの行政や各種団体の皆様方が1300年を旗印に多大な努力をされた結果を、我々が享受させていただいているという図式なのだと思います。深く感謝するとともに、今年来て下さったお客様方がその滞在に満足なさるかどうかは我々の責任ですので、しっかりとした「おもてなし」に努めさせていただきます。
また、このような観光振興の成功が一部事業者に享受されるだけでなく、全体の益となるようにしていかなければならないと思います。「たくさんの人が自分の町に来て、おかげで自分はとっても得した!嬉しかった!」と市民・県民が思える仕組みが機能することが必要です。
ところで、記念事業の成功は、どうも北部に偏っているようです。奈良県全体の連携が、かねてからの課題です。現状、市内だけでも情報がうまく流通・連携しているかというと、そうではありません。奈良県全域ともなればなおさらのことです。今年身に染みたのは、情報発信がいかに大きく影響するかということです。まだまだ現状では無駄も多いし、外部の方からはわかりにくいでしょう。奈良県の情報がどこか一箇所で集約・整理され、外からの要望にワンストップでお答えできるようになれば良いのですが……。
2 歴史・文化財へのかたより            野村 幸治(NPO法人住民の力 天の川実行委員会)
奈良県の観光振興は、従来から、行政や観光事業者などが歴史文化を顕彰することに傾注しすぎてきました。法隆寺地域の仏教建造物や古都奈良の文化財、紀伊山地の霊場と参詣道など世界遺産登録の推進、ならシルクロード博や平城遷都1300年祭が最たるものです。また今も、藤原京・飛鳥・桜井の方で文化遺産登録の話が出ていますが、こういうことは観光振興と全く関係ないと思っています。

3 吉野町の観光の現状                                          北岡 篤(吉野町町長)
私は吉野で酒をつくっておりますが酒造業としては観光には全く触れていません。同じく柿の葉ずしの「平宗」という有名な店がございますが、これも観光協会には入っていません。このように吉野町観光協会は、吉野山という特殊な部分と津風呂湖という特殊な部分、国栖の里のものづくりという特殊な部分の集まりの集合体という意味でしかありません。これをいかに全町的に、我々のような酒造業や味噌・醤油の醸造業、食品、レストランという類も含めた吉野町観光協会にしていくか思案しているところでございます。

4 天川村の立場から考える観光                               埜 弘道(紀の国屋甚八)

○当地区の現状 
キーワードとして「自然」と「神秘」があります。「自然」というのは美しい水、川です。環境庁100選が3つあります。「自然」とは、大峰山の山上辺り、ごろごろ水の流水群、双門の滝を天川村は有しており、自然に恵まれた場所であるということです。それから「神秘性」は、1300年もの間続く大峰修験道、そして近くには有名な芸能の神様である天河大弁財天がいらっしゃるということでお分かりいただけると思います。ハード面はそういうことです。
ソフト面は、これが非常に面白いと思うのですが、私の言葉でいえば「行者さん仕込みのホスピタリティー」です。これはどういうことかといいますと、行者さんの行動は夜中や早朝などの時間帯を問わず、とりあえずわがままな行動が多いです。いつ来るかも分かりません。それに対して旅館は常に対応します。しかもすぐ対応しないと機嫌を損ねてしまいます。例えば私が帳場でお客さんと話していたとします。その時行者さんがどのような行動をとるかと言えば、ガラッと帳場のドアを開けて「大将、つまようじくれや」などという要求をされます。それにすぐ対応していかなくてはなりません。夕飯時期が例え5分であってもずれれば、帳場に向かって怒鳴り声で怒ってきます。ですから要望に対して我々は素早く動かなければいけないということに自然に鍛えられているということです。もう一つの「行者さん仕込みのホスピタリティー」は、行者の町ということで旅館に関係ない町中の人たちも外から来られたお客さんを歓待するものという意識が醸成されています。そのため人を見かけると皆声をかけてくれますし、一般の住民の方でもお客さんには声をかけます。そういうことが「行者さん仕込みのホスピタリティー」ということです。

○客層の変化
過去20年の数字を統計しましたら、私の感覚ですが極めて低くなっています。泊まっているお客さんの行者さんのウエイトが3分の1にまで減っています。昔100人来ていたとしたら30人くらいです。それに対して一般のお客さんが微々たるものですが確実に増えてきていることで現在のバランスをどうにか保っています。

○インターネット
 もう一つインパクトがあったのがインターネットの普及です。「インターネットなくして今の洞川はありえない」ということをある本で読みました。つまり一般客集客に対しての素晴らしい武器になっているということです。今日の予約システムは激変しています。

5 外国人客の訪問                     浜浦 義勲(NPO地域創造政策研究センター 幹事)

○インバウンド受け入れ上の問題点、
 外国からどのくらいの人が来てくれているのかですが、日本へは2008年で8,351万人、2009年は大きく減少して6,790万人です。それに対して奈良県にどれくらい来てくれているのかですが、これは正確な統計はとれません。観光客の奈良県の通過客という形でしかでませんがそれから逆算すると、年間約50万人前後が来ているということがわかります。
 次にインバウンド受け入れ上の問題点がどこにあるのかということですが、奈良県全体の入込客が増えないということの原因として、まず1.外国での広報活動の不足があるのではないだろうかと思います。それから、2.奈良県は、韓国や中国などの方が日本に行った場合のゴールデン・ルート・ツアーには入っていません。例えば関西に入った場合は大阪、京都、名古屋、横浜、東京に行って帰国するというコースが標準です。奈良は大阪や京都の近郊にあるにも関わらず、蹴飛ばされているという状況にあります。あるいは、3.その2府県が強力なライバルになっているとも言えます。買い物は大阪、観光は京都というような状況になっています。他にも、4.国際的なコンベンションの開催が不足していることが言えます。今度9月にAPECが行われるということで非常にいい機会ですが、例えば国連の軍縮会議が毎年日本で行われています。1989年以降ずっと行われていますが、これは文化都市並びに被爆都市で行われているのです。お隣の京都では5回行われています。あるいは秋田、金沢、福岡、新潟でもしていますが、奈良ではしていません。なぜ奈良が呼ばないのか私は不思議でしょうがありません。恐らく奈良はこういう誘致活動もしていないのでしょう。5.外国語のパンフレットも不足しています。奈良市では6種類のパンフレットをつくっていますし、平城京でも3種類のガイドブックをつくっていますが、今外国人環境客で非常に賑わっている飛騨高山では14ヶ国語の外国のパンフレットを印刷しています。それが世界文化遺産の地である奈良ではほとんど印刷・発行されていないという、非常に不可思議な状況があります。



2.奈良の観光、課題・将来像

1 課題は何か                               野口 隆(奈良産業大学教授)
奈良の観光の課題は、奈良県内に多くの方に来ていただき、もっとゆっくり滞在してもらい、満足の結果としてお金を落としてもらう、あるいはお金を使ったことを満足してもらうことだと思います。そしてまた来てもらうことです。 奈良市内については宿泊・情報・交通の充実が必要です。奈良県内各地域については、あまり知られていないが魅力的な観光・地域資源を活かして、いかにお客さまを呼ぶかという策が必要であり、奈良市内に泊まり翌日は中南部を訪れるルート開拓が望まれます。そのためには奈良市内で、県内各地域の情報がわかることが必要です。

2 奈良県の取り組み
遷都1300年を契機に、冬季にお客さまに来てもらう取り組みや、うまいものづくり、もてなしのまちづくりモデル地区など、様々な取り組みが進められています。

3 地域での新しい取り組み
町家の雛めぐりが高い認知を得るようになった高取町をはじめ、奈良市内、室生や大宇陀などで、地域主体の観光交流づくりの取り組みが進められています。奈良県東部の中山間地域を南北に結ぶ工房街道も、2年の時を経て、少しずつ形を成してきています。
一方、特に中国からの観光客の大幅増をどのように迎えるのかも検討課題かと思います。

麻生 憲一(奈良県立大学教授)
4 将来像(目指すべき奈良の姿)
目指すべき奈良の姿は、身の丈にあった観光です。京都をまねた観光をする必要はなく、奈良は奈良らしい観光を目指せば良いのです。知事も、遷都1300年祭は来客数にはこだわらない、本当に来て良かったと思ってもらえる人を増やすことが重要であると言っておられました。よく観光では、観光入込客数という数が前面に出てきますが、それよりも重要なことは、観光消費に繋げていく方策を考えなければならないということです。そのためには、来てくださった方々が不満をもって帰らないよう、もてなしを、住民がどのように捉えていけるかが重要であると思います。

5 必要な政策
地域公益性、つまり、地域でいま何をしなければならないのかをまず考えるということが必要です。その時に、「個別最適性」と「全体最適性」という言葉が使われています。地域が発展・成長していくためには、個別最適のような、個々の観光事業者や個々の人が利得を得るということではなく、全体の利益を考える全体最適を前提に考える必要があります。それが最終的には、個別最適性に向かっていきます。長期的に見た時に、地域全体のプラスに繋がっていくのだと思える政策を進めていく必要性を感じています。

中野 聖子(ホテルサンルート専務取締役)
6 目指すべき奈良の姿と必要な政策
県民が奈良の歴史・文化・風土を誇りに思えている奈良、そのために老若男女問わず教育・研修の機会が充実している奈良であることが望まれます。それによって、情報発信力も高い奈良、国内外からの交流人口が多い奈良、交流人口が多いことから各種産業が活性化している奈良が目指すべき姿であると考えられます。
必要な政策は、長期的に考えて上記のようになるために、重要なのは郷土愛の醸成教育ということでしょうか。

野村 幸治(NPO法人住民の力 天の川実行委員会)
7 歴史文化を観て回る観光から住民と交流する観光へ
観光の潮流は、風光明媚な自然環境や歴史的価値の高い神社仏閣、有名温泉地などの名所旧跡等を観て回る観光から、地元住民と交流・体験ができる観光へと変化してきています。そのため、従来型の名所旧跡等にプラスして、その地域の住民といかにふれあえ、体験ができ、その地域に長時間滞在してもらうかということが重要な観点であると思います。お客さまも、地域の人とのふれあいや日常生活にない癒しや思い出探しなどを求めています。今の世の中の動きを捉えることが観光を考えるうえで大切なことです。
奈良の場合は、誇れる自然や歴史・伝統行事がたくさんありますので、そこにその地域の伝統工芸や特産品、「地元住民との交流」が加われば付加価値が高まり、お客さまがその地域に長く留まってお金を落としてくれると思います。
そういうことで、この「観光交流地域」とは、地元住民が観光客との交流を楽しんで積極的に関わるという、住民が郷土に誇りをもち、来訪者が何度でも訪れたくなるような「住民が光り輝いている」地域になることが望ましいと思います。

北岡 篤(吉野町町長)
8 おもてなし
おもてなしが悪いということは、「求められているもの」と「提供できるもの」がズレているということです。
実は吉野は、観光の素材が本当にあり過ぎるほどあるところでして、そのことが、お客さんが何を求めて来られているのか掴みにくいという状況を生み出している面があります。さらに、住んでいる方々や観光に携わっている方も含めて自分たちの町の魅力をよく知らず、吉野やサクラのことを説明できません。
自分たちの町の魅力を再認識するためにどうしたら良いか。これは教育からやらないといけないと思っていますが、「郷土を愛する心の教育」をどう現場でやっていくかというところです。例えば万葉集で吉野のことを詠っている歌が90句程ありますがほとんど知らないというのが現状です。伝統芸能の材料や文学歌舞伎の千本桜など色々あるのですが知られていません。ここの話くらい人に語れるようなそういう教育を幼小中くらいの間にきちんと教えていきたいなと思っています。

紀埜 弘道(紀の国屋甚八)
9 知名度の向上
今のおもてなしに決して満足はしていません。もっともっと高みを目指しています。今何をしているかということですが、とりあえず土地の知名度を上げようということをしています。先ほどの観光資源が恵まれていることやホスピタリティーも他には負けない自信があるといったことがありまして、土地の評価が非常に高いです。これは“じゃらんnet”や“楽天”の口コミ評価の点数を見ていただければ分かります。去年のモニター結果でも高い評価を受けています。それらの調査の結果によって私は確信を得たのですが、地区の評価が高いです。だったらそれを知ってもらいたいということで、知名度のアップを考えました。できれば黒川、湯布院レベルまで持っていきたいなと思っています。でも、常にそういう気持ちでアンテナを張っていれば引っかかるということもあるでしょう。
 ツールについては、最も効率的なツールを探しながらしています。現在はJTBや近畿ツーリストではなく、じゃらんや楽天を使っています。我々のド田舎にとってインターネットはとても役に立ちます

林 信夫(平城遷都1300年記念事業協会プロデューサー)
10 行政・現場と政策提言
行政と実際のその現場の業界の方、そして政策提言をされる方。良く考えてみましたら、今まではこの三者が大体噛み合っていなかったのが日本だなぁという気がします。
これはおもしろい例ですが、関西経済連合会というのがあります。連合会が何をやってきたかといいますと、とにかくシンクタンクをつくってあらゆる政策提言ばかりやってきましたが、何一つ実現しませんでした。そういうことから言いますと、どうもこの三者が噛み合う場、もしくは噛み合う基本的な考え方が実は今一番求められているのではないでしょうか。この三者のお立場が全体としてこの観光・交流という大きなテーマのもとにどう噛み合わせていくか、もしくは我々がその三者の噛み合わせをどう理解していくかが、実は非常に大切だと思いました。


3.政策提案
フォーラムには2010年7月末現在100件近い政策提案が寄せられている。これらのうち観光・交流に関する提案は、「其の他」に分類されている2件を含め、全部で26件であった。これらの、提案を次のように、目標=分野別に分類・整理しリストアップした。

(1) 奈良県の将来にむけた目標

第3回 地域づくり分科会(7月3日)では、「奈良県の将来に向けて」と題して、次ページのとおり県がこれから進むべき方向、施策の目標を提案している。本分科会は、この施策の目標を、以下の・・・・で示す内容とうけとめ、8つの目標を8つの努力すべき分野とした。また、8つの分野に新たに文化の創造を加え、9つの目標=分野とした。

目標1  県民が能力を発揮できる機会が多い奈良県を創る・・・・人材の創出

目標2  NPO・ボランティア・地域団体が行政と協働し、安心して、活力を持って暮らせる 奈良県を創る・・・・NPO・ボランティア・地域団体の発展

目標3 利便性が高く、各地域の個性・特性を発揮できる地域・広域生活圏を持つ奈良県を創る・・・・地域づくり・広域生活圏づくり

目標4 資源を活かし、国内・世界各地域の貢献する高次人材を育成する奈良県を創る
・・・・高次人材の創出

目標5 他地域の人々との交流により新しい価値を生み出す奈良県を創る・・・・交流促進

目標6 特徴的な技術・価値を提供する産業、コミュニティービジネスにより雇用を拡大する奈良県を創る・・・・観光の産業としての振興

目標7 自然資源を活かした循環型経済社会を実現する奈良県を創る・・・・循環型経済社会

目標8 行政スタッフが能力を発揮し、迅速・適切な政策を実行する奈良県を創る
・・・・行政の能力発揮

目標9 ゆたかな歴史・文化の蓄積の上に、新たな文化を創造する奈良県・・・・文化創造

全部で26件あった政策提案を上記の目標=分野に従って分類し、リストアップすれば、次のとおりである。


目標1.人材の創出

4-17 こどもたちによる「お迎え」マップの作成
4-19 奈良パスポートの発行による奈良を挙げての歓迎体制づくり

目標2.NPO、ボランティア、地域団体の発展

4-1 観光交流支援機構-外国人旅行客(インバウンド)の来奈良の促進と交流
4-16 京都を超える 奈良の魅力の「情報発信の力」をつける
6-1 奈良の産業の活性化に向けて-ハートフル奈良観光都市宣言

目標3.地域づくり・広域生活圏づくり

4-10 「ならまちロード」の設定と奈良市街のエリア分割
4-13 歴史のつながりを感じる観光
4-14 宇陀の高原地帯を歴史・文化・アウトドアの聖地化-連携した総合力がある観光 リゾ―トとする
4-18 視覚障害者のための観光ナビゲート用システムの導入
4-23 屋根付き、簡易トイレ付きの団体用休憩所(おべんと広場)の設置

目標4.高次人材の創出

4-6 本格的・特異な「国際観光学部・学科」の新設

目標5.交流の促進

4-3 宿泊観光の振興策-観る観光から交流する観光へ
4-20 人を中心とした観光交流への再構築

目標6.観光の産業としての振興

4-4 奈良の観光交流の質の向上を目指す観光交流評価情報提供システムの構築
4-8 奈良を売り込むため-京阪神や首都圏や九州などへの奈良の有力店の出店促進
4-11 神社仏閣の6時開門
4-12 ナイトマーケット「平城夜市」の通年開催
4-15 地域観光資源の掘り起こしと新たな切り口の検証
4-24 現県庁の場所を新しい観光産業集積地とし、世界的な高級ホテルを誘致する

目標7.循環型社会:自然との共生


目標8.行政の能力発揮

6-2 奈良K3(ケイキューブ)-環境・観光・県庁のKが「×(かける)」に作用する奈良県づくり

目標9.文化の創造

4-2 「芸術と歴史の都 奈良」の出版
4-5 日本人の心の故郷:奈良へ
4-7 新旧住民が協働 -地域の魅力をアピールする映画づくり
4-9 南都八大寺セミナーの常時開催
4-21 日本の(日本人の)故郷:奈良づくり